マダム・ジジからの手紙
フランス・ロワール地方の古城に暮らす伯爵夫人、マダム・ジジからプティ・セナクルへ届いたメッセージをご紹介しています。今回からは、太陽きらめくカリフォルニアに生まれた夢見る少女が、画家を目指しヨーロッパへ渡り、運命の出会いを経て、奥深い森にたたずむ古城に暮す伯爵夫人となる・・、そんなマダム・ジジの華麗でドラマチックな人生をご紹介しましょう。
伯爵夫人になったカリフォルニアガール 4
私の学校の成績は非常に良く、すべての課目がA評価でした。実際に私たちきょうだいはみんな成績が良く、なぜ私たちが実際のIQレベルよりも高い成績を取れるのかを知るため、学校のカウンセラーが私たちの家を訪問し、家庭の中で私たちがどう育てられているかをチェックしたがったほどです。もちろん、私たち自身はなぜなのか分かりませんでした。しかし、子供時代を振り返ってみると、私たちは厳しいしつけと、たくさんの愛情と共に育てられたように思います。両親はいつも私たちを褒め、励ましてくれました。私たちが何かを行って、一部しかうまくいかなかったときは、どうしたら次はもっとよくなるかを話し合ったものです。
父は私たちに、十分な努力をすれば、生まれ持った才能の範囲でなりたい人に必ずなれる、といったことや、人前で話すときにどのようにしたらリラックスしてしっかりと起立したままノートを見ずに話せるか、といったことを教えてくれました。また、ときには夕食の後に偉大な古典文学を読み聞かせてくれました。しかし父は一方でひどく短気で怒りっぽく、乱暴でぶっきらぼうな人であったため、私が十代の頃は本当に厄介な存在でした。父は家庭を完全に支配し、そして母は「優れた外交官」としていつも父と私たちの間を取持ってくれていました。私は父のような気難しい人に母が対処する様子を見て、母の決断力や品位を人生における模範とするようになったのです。
私の母 ? ジャンヌはほぼ完璧な母親です。美しく、愛情深く、そして私たちが必要とするときはいつも家にいてくれました。私たち娘3人には必要な家事道具を与えて家の仕事を手伝わせ、さらにコティヨンダンスや立ち振る舞い、乗馬、水泳、タイピング、縫い物といった教室に子供を通わせることにも熱心でした。また何でも創りだすことができる、生まれながらの芸術家でもありました。母が人生において一番後悔していたのは、とても若いときに結婚して母親となったため、大学に進学しなかったことです。家庭で4人の子供を育て、7年間義理の父親の面倒を見たのに続き、義理の母親を12年間世話するなど、母は他の人のために尽くす人生をおくった後、ようやく自分自身のために何かしようと決心したのです。彼女は67歳になったとき、大学に入って美術を専攻し、74歳でその学位を取って大学を卒業しました。設定した目標を最後までやり抜く私の能力はこういった母から授かったものであり、この最後までやり抜くことは人生において欲しいものを手に入れるための最も重要な方法の一つだと思います。
父は音楽を愛し、よく響くテナーの声を持っていました。私たち子供全員には何らかの楽器を演奏するように勧め、私が歌うことを選んだとき、私をオペラ歌手の先生、ミセス・アイグーリのプライベートレッスンに通わせたのです。私は生徒の中で一番幼かったため、黒いグランドピアノの側に小さい箱を置き、その上に私を立たせました。私はレッスンの間、先生の方を向き,両手を自分の身体の前でしっかりと握り両肘を横に突き出して,先生の伴奏に合わせて歌っていました。先生はレッスンの最後になると、濃い色のカーテンの裏にある謎めいた機械の電源を入れた後、その週の課題曲を演奏します。これはその演奏を録音し78回転SPレコードを作るためで、私はそのレコードを持ち帰り、寝室にある小さな蓄音機でレコードをかけて練習するのです。家で祖父母と従兄弟達と夕食を共にした後、父のリクエストで私たちはよく「小さなコンサート」を開き、それを楽しんでいました。私のお気に入りの曲は「オーバー・ザ・レインボー」でした。
しかし私はその後、フルートを習いたくなりました。他の二人の姉妹がお金のかかるピアノを既に習っていたため、父が私に与えた選択肢は歌とフルートだったからです。現在でもフルートの演奏を楽しんでおり、時折、ジャズ ビブラホンを演奏する夫のパトリックと一緒に即興演奏をしています。私がフルートを習って以来、家でのコンサートは妹ドナによるピアノとフルートの演奏になったのです。
しかし私はその後、フルートを習いたくなりました。他の二人の姉妹がお金のかかるピアノを既に習っていたため、父が私に与えた選択肢は歌とフルートだったからです。現在でもフルートの演奏を楽しんでおり、時折、ジャズ ビブラホンを演奏する夫のパトリックと一緒に即興演奏をしています。私がフルートを習って以来、家でのコンサートは妹ドナによるピアノとフルートの演奏になったのです。
つづく
gigi
マダム・ジジ プロフィール
狩猟で有名な、ロワール地方、ソーミュールにほど近い「レ・ゾーベール」の森を所有する貴族、ド・ジュヌブライ伯爵夫人として消えつつある18世紀貴族の暮らしを今に残す生活を続けると同時に、アーティスト名、ハーパーでプロの画家としての制作も続けている。アメリカ、ヨーロッパ各地から個展を開催する傍ら、「SUNDAY」等のアートブックを出版。1990年、アメリカン・アカデミー・オブ・ローマ招聘アーティスト。
また、アメリカ独立戦争に関わった家族の末裔が中心になる活動「DAR」やロワール地方で毎夏開催されるイベント、オペラ・ボウジェ、等、音楽家や芸術家のパトロナージュを募る各種団体でメセナ活動を行っている。
『マダム・ジジに教わる〜フレンチ・マナーなおもてなし』
「Bon Chic vol.2 (別冊PLUS 1 LIVING・主婦の友社) 2010年3月」
『フランス的美生活』
「グレース(世界文化社)2007年10月号」
バックナンバー
- Gianne's Monthly News Summer 2022(2022/07/07)
- Gianne's Monthly News Fall 2021(2021/11/03)
- Gianne's Summer Monthly News 2021 - Exploring with Pastels(2021/07/01)
- Gianne's View Spring 2021 - Venice and Spacescapes(2021/05/09)
- Gianne's Holiday Greetings(2020/12/20)
- Gianne's February 2020 News(2020/02/22)
- Gianne's News - Special Holiday Sale Information 2019(2019/12/25)
- Gianne's Summer News 2019(2019/07/21)
- Gianne's Monthly News May 2019(2019/05/30)
- Gianne's Monthly News Late March/Early April 2019(2019/04/11)
- Gianne's Monthly News February 2019(2019/02/25)
- Gianne's Monthly News November 2018(2018/11/25)
- Gianne's Monthly News September/October 2018(2018/10/27)
- Gianne's Monthly News August 2018(2018/08/27)
- Gianne's Monthly News July 2018(2018/07/17)
- Gianne's Monthly News June 2018(2018/06/25)
- Gianne's Monthly News February 2017(2017/03/02)
- Gianne's Monthly News January 2017(2017/01/23)
- Gianne's Monthly News December 2016(2016/12/22)
- イタリア、幻想的なNinfa庭園より(2016/11/18)
- トスカーナ、ニキ・ド・サンファル「タロット・ガーデン」(2016/10/21)
- クリストのインスタレーション「Floating Piers」(2016/08/23)
- カリフォルニアから(2016/03/29)
- ラ・モルテッラ庭園(2015/09/07)
- モルトラより(2015/07/16)
- マントンへ戻ります(2015/06/25)
- カルフォルニアのラグーナビーチから(2015/05/08)
- 創作活動は続きます(2015/03/22)
- 南仏・マントンにて(2015/01/25)
- Joyeuse Fetes!(2014/12/25)
- そしてまた前進です(2013/9/30)
- SPRING 2013 San Clemente Journal(2013/06/30)
- ドメンヌ・デュ・ライヨル 3(2012/12/11)
- ドメンヌ・デュ・ライヨル 2(2012/10/30)
- ドメンヌ・デュ・ライヨル 1(2012/09/30)
- 作品〜Wiled Poppies(2012/08/30)
- 南仏、ドメンヌ・デュ・ライオルで展覧会開催(2012/08/10)
- ポピーの草原(2012/07/10)
- 南仏の丘から(2012/05/31)
- そして、フランスへ(2012/04/30)
- 庭園を探して(2012/03/10)
- 伯爵夫人になったカリフォルニアガール 5(2012/02/24)
- ブドウ−生命の樹−を描く(2012/02/12)
- 伯爵夫人になったカリフォルニアガール 4(2012/02/04)
- 絵の中で生き続ける(2011/12/15)
- メアリーカサットの庭空間(2011/11/30)
- 展覧会を終えて(2011/11/10)
- 展覧会がはじまります(2011/10/02)
- ”Why the Choice of Beauty?”(2011/08/17)
- 夏。新しいイメージ(2011/07/13)
- 創作は順調です(2011/06/13)
- 光、そして影(2011/05/12)
- 春、新しいプロジェクトのはじまり(2011/04/07)
- 風景画と静物画にまつわる砂漠での考察(2011/03/15)
- 伯爵夫人になったカリフォルニアガール 3(2011/02/09)
- シーズンズ・グリーティングス 2011(2011/01/23)
- 伯爵夫人になったカリフォルニアガール 2(2011/01/07)
- 伯爵夫人になったカリフォルニアガール 1(2010/12/21)
- アートなホリデーシーズン(2010/12/07)
- 12月はグループ展に参加します!(2010/11/25)
- 花を描くということ(2010/09/23)
- アートの”鍵”(2010/06/21)
- わたしの作品がギャラリーに展示されます。(2010/06/01)
- 初めての日本〜タウン&カントリー・その2(2010/05/24)
- 初めての日本〜タウン&カントリー・その1(2010/05/07)
- パリの日常〜スパとルーヴル(2010/04/19)
- わたしの絵画について(2010/04/07)
- わたしのHPが新しくなりました!(2010/03/11)
- プティ・セナクルのみなさん!(2010/02/05)