• 家具と装飾美術の歴史を学び、仕事に生かす女性たち

    「様式とは、単にデザインを語っているのではなく、背景には時代の機運や当時の人々の考え方が流れています。」


    太田はるのさん(カレ・ブラン代表、ストアデザイン、スペースデザイン、ショーウィンドーデザイン、VMD、商品企画等)

    両親揃ってアーティスト、という芸術一家に育ち、学生時代からフランスのモダンデザインが大好きだったという太田はるのさん。彼女は多摩美術大学を卒業後、GKインダストリアルデザイン社に入社し、順風万帆な生活を送っていたものの、4年半ほど経ったとき渡仏することを決めたのだそうです。

    「フィリップ・スタルクに代表されるように、フランス人はコンセプショナルなものを好むため、それに従ってひとりの建築家が、家具から食器までインテリアをトータルデザインするのが一般的です。また、マーケティングよりも自発的に表現することが善しとされる、デザイナー冥利に尽きる国。大学ではグラフィックを学びましたが将来のことを考え、改めてフランスでインテリアを学び直したいと思ったのです。」


    ●左の本:彫刻家、ジャコメティやエルメスの革細工職人の手を借りてすばらしい家具を生み出したデザイナー、ジャン・ミッシェル・フランク。●広げた本:ガラス、鉄細工などを用いたフェミニンでスタイリッシュな40年代の家具は、はるのさんのイメージソースに一役買っている。

    ソルボンヌ大学上級クラスのディプロムを手にしたときに、それと外国の大学の卒業証書があれば、バカロレア試験を受けなくても大学の入試資格が与えられること知った彼女が選んだのは、入狭き門の「エコール・ド・カモンド」。そして、ポートフォリオと質疑応答からなるコンクールに見事合格し、晴れてその入学資格を手に入れたのです。

    「エコール・ド・カモンドはデザイン・オブ・ザ・イヤーに選ばれるような有名建築家など、一流の講師陣を揃えた学校として有名です。パビリオンのレストランデザインの授業はワークショップ形式で歴史を考察する発表が義務づけられ、個々に論文を書くというスタイルで進められました。私たちのグループは食器の歴史をリサーチすることを決めて、歴史のなかの事件と芸術、そして、テーブル・デコレーションの変遷を3本軸に年表を作って発表したのです。」

    「少し教養のあるフランス人なら芸術様式の変遷が頭に入っているのは常識です。彼らと同じステージで仕事をしたいと思ったら、それを知っておくのは当然のこと。様式とは、単にデザインを語っているのではなく、背景には時代の機運や当時の人々の考え方が流れています。例えば、アール・デコ時代の家具が多岐に渡るには、技術革新によって様々な表現が可能になり、植民地などからあらゆるエキゾティックな木が輸入されたから、だとか…。デザインが生まれた背景には必ず理由があります。だからこそ、それらをデザインに生かす時は、その時代の様式の考え方をヴィジュアルに取り入れ表現しています。」


    プティ・セナクルの総合コースでは、家具や陶磁器、ジュエリーや腕時計までヨーロッパで誕生した装飾美術品の様式をイギリス・アンティーク家具修復国家資格をもつ蜷川浩史氏をはじめ各分野の専門家のもとで総合的に学びます。

    学生時代に作った年表は、現在でも地図のように頭のなかに広がっていて、ヨーロッパ文化の深いところを背景にしているフランスの老舗ブランドの年間テーマを理解し、シーズンごとのコンセプトとショーウインドーのデザイン製作をするという彼女の仕事に大いに役立いるそうです。

    また、グローバル社会で仕事する彼女の頭には、”書かれていない考え方は存在しない。”という考え方が明解に刷り込まれています。デザインをおこす以前に、きちんと定義づけしたプレゼンをし、皆からの賛同を得ることもインテリアデザイナーにとって、とても重要な仕事なのだと語ります。

     

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