マダム・ジジからの手紙
フランス・ロワール地方の古城に暮らす伯爵夫人、マダム・ジジからプティ・セナクルへ届いたメッセージをご紹介しています。今回からは、太陽きらめくカリフォルニアに生まれた夢見る少女が、画家を目指しヨーロッパへ渡り、運命の出会いを経て、奥深い森にたたずむ古城に暮す伯爵夫人となる・・、そんなマダム・ジジの華麗でドラマチックな人生をご紹介しましょう。
伯爵夫人になったカリフォルニアガール 2
The Vie de Chateau, by Gianne de Genevraye
Chapter 1, California and Paris and Rome
私が3年生のとき、私の家族はロングビーチに引っ越しました。両親が買った1915年築の2階建のアーリークラフトマンスタイルの家はひどい状態でした。前の家主とその8人の子供たちによりほとんど住めない家となっており、すべての部屋の壁には子供たちのクレヨンの落書きがありました。
さっそく母は家の最上部から最下部まで改装にとりかかりました。彼女は大工仕事にも精通しており、マイターボックス(木工用具)を使ってデザインしたモールディングパターンを作り、それを壁や本棚に使っていました。彼女は各部屋も塗装しました。すべての準備作業から研磨作業、表面の仕上げまで、一人で行いました。彼女はまたビクトリア調の長椅子に合わせてクッションをニードルポイント(刺繍)で飾り、60年代の定型的な猫の絵を装飾的に描き、家具や家中の膨大な木工品を修復しました。すべての庭の手入れも行いました。一方、私の父は週に一度外出し、芝生を刈り、大リーグ ベースボールの試合をヴィン・スカリー(ドジャースの専属アナウンサー)の眠気を誘う実況で聞いていました。また、父は家の前でキャッチボールをしてくれました。私は毎日学校が終わると自転車で遊ぶか、近所の子供たちと一緒に家の前の通りでベースボールをして遊んでおり、私たち兄弟と2、3軒隣のカトリック教徒の家の子供たちでベースボールチームを作っていました。
父は第二次世界大戦の退役軍人で、19歳のときにフランスでのアンデンヌの戦闘に参加しました。手榴弾の金属片によって両足を負傷したため、戦争から戻ってきたときは2本の杖で歩かなければならず、リハビリ施設で療養しました。怪我が治った後は、ミシガン大学に進学し、演劇を専攻しました。結婚前は、ラジオアナウンサーとして、またゼネラルエレクトリック社のプレゼンテーターとして、新しく開発された電気製品を売り込むためにアメリカ中を回りました。結婚したとき、彼はこうしたラジオや出張、演劇関連の仕事をあきらめて、家庭を支えるために退屈な仕事に就きました。そのためか父は働くことが嫌いでした。私は、父が営業活動や新製品のプロモーションの後に生活のためにしていた仕事をよく理解できませんでした。
その一方、私の友達の家のように新しい自動車には乗れなくても、父は最高の環境の中で暮らしていることを知っていました。私たちは裕福でも貧しくもなく、両親からはお金の価値や節約、節税を教わりました。また「あなたたちは非常に恵まれているのだから、人に“お返し”しなさい」とも教わりましたが、私自身はいつもそのように思っていたわけではありませんでした。また「あなたが付き合っている人たちはあなた自身なのです」、「不平を言わないこと、言い訳しないこと」「もしよいことが何も考えつかないときは、何も言わないこと」などとよく言われていましたが、一番印象に残っている言葉は「悪い態度に言い訳などありません」でした。両親が言い争っているところは一度も見たことはがありませんでした。両親はけんかになると、寝室に行き、ドアを閉め、そして何とか解決していました。けんかは毎回,それが何を意味するにせよ、父の「映画を観に言ってくる」の一言で、終わりました。
毎週日曜日、教会に行った後はいつも大きくて古い、リアウィングの付いた赤と白のダッジステーションワゴンに乗ってサン・フェルナンド谷からエンシーノまでドライブし、そこで父方の祖父と祖母と一緒に1日を過ごしました。夕食を取ったあとはウォルトディズニーのテレビを視ました。そのあとまた長時間かけて、ときおり父が教えてくれた軍歌を歌いながら、車で家に帰ったものです・・・
つづく
gigi
マダム・ジジ プロフィール

狩猟で有名な、ロワール地方、ソーミュールにほど近い「レ・ゾーベール」の森を所有する貴族、ド・ジュヌブライ伯爵夫人として消えつつある18世紀貴族の暮らしを今に残す生活を続けると同時に、アーティスト名、ハーパーでプロの画家としての制作も続けている。アメリカ、ヨーロッパ各地から個展を開催する傍ら、「SUNDAY」等のアートブックを出版。1990年、アメリカン・アカデミー・オブ・ローマ招聘アーティスト。
また、アメリカ独立戦争に関わった家族の末裔が中心になる活動「DAR」やロワール地方で毎夏開催されるイベント、オペラ・ボウジェ、等、音楽家や芸術家のパトロナージュを募る各種団体でメセナ活動を行っている。
『マダム・ジジに教わる〜フレンチ・マナーなおもてなし』
「Bon Chic vol.2 (別冊PLUS 1 LIVING・主婦の友社) 2010年3月」
『フランス的美生活』
「グレース(世界文化社)2007年10月号」
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